中国 金融危機後高まる存在感 国内経済を優先 国際的な責任回避
2010-7-20
世界金融危機後、中国の存在感が高まっている。同国が経済や外交で強く自己主張をする場面も増えている。しかし、同国の最重要政策は国内経済の「近代化」であり、外交の基本方針も近代化に有利な国際環境をつくりだす点は変わっていない。同国は国際金融、国際貿易、地球環境などで過大な負担を負わないよう振る舞っている。だが、経済危機をいち早く脱したことで、国際社会の中国に対する期待が高まり、同国を見る世界の目は変化している。
≪分析≫
中国は世界不況をうまく乗り切った。いまや、同国の「平和的な台頭」や「平和的な発展」よりも、「不可避な台頭」が論じられることが多い。しかし、中国は現在も発展途上国であり、その対外行動は戦略的・経済的不安に根ざし、中国の指導部は、同国の近代化を阻害する過大な負担を押しつけられないよう警戒している。
◆3つの外交目標
中国の外交政策の目的は、20年以上にわたって基本的に変化していていない。外交政策の第1の目標は、国内の発展にとって最善の国際環境を実現することだ。つまり、他国が中国の近代化を促進し、少なくとも妨害しないような「調和した世界」をつくりだすことだ。近代化は国民の福祉に不可欠であり、中国共産党の支配に正統性を与えてくれるからだ。
第2の目標は、資源の獲得だ。中国経済は、石油、天然ガス、金属、木材などの輸入に大きく依存しており、ペルシャ湾、南シナ海、アフリカ、中南米、中央アジア、ロシアでの資源獲得に、ますます積極的になっている。
第3の目標は、周辺地域の安定だ。中国は朝鮮半島情勢の展開にとくに注意を払っている。韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没事件以降も中国は北朝鮮を支持し続けている。北朝鮮で体制が内側から崩壊し、多数の難民が流入することを警戒しているためだ。また、中央アジア、東南アジア、ロシア極東地域の安定も、中国が近代化に集中するために必要な条件だ。
◆期待と圧力
中国は世界金融危機からうまく抜け出した数少ない国の一つとして、国際社会からの期待が高まる一方、圧力も強まっている。
米中関係は最近数カ月の間では改善しているが、人民元相場、知的財産権、市場参入、米国から台湾への武器輸出、イランや北朝鮮への対応といった重要な問題で両国の立場は大きく隔たったままだ。中国は6月19日、元相場の弾力化を発表するなど、米国の懸念に敏感に反応するようになってきているものの、米中関係は現在も緊張している。当面の課題である元相場の上昇が不十分であると米国が判断すれば、両国の関係は著しく悪化する恐れがある。
中国は「調和的な世界」「ウィン-ウィンの関係」を強調しているが、他国は中国の行動を利己的、偽善的で近視眼的とみている。昨年12月、デンマークのコペンハーゲンで開催された第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で、同国の消極姿勢が厳しく批判された。また、中国人民解放軍の海軍が南シナ海で活動を活発化させていることに、周辺国は懸念を強めている。
中国外交の今後20年の課題は、発展途上国から脱産業社会に移行するとともに、次代の超大国として国際秩序の維持に責任を果たすことだ。「責任ある利害関係者」として欧米のひな型に合致する見込みは小さいものの、過度の責任を負うことを避けながらも、国際社会の一員として、より積極的に行動するようになるだろう。
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≪結論≫
中国の外交政策は表面上の変化が認められるものの、戦略的な変化は現れていない。今世紀中に、中国と米国が戦略的なライバルになる可能性は排除できないが、両国は相互に深く依存し合い、一定の建設的な関係が維持される公算が大きい。中国は、唯一の超大国である米国に対抗する能力も意図も持っておらず、既存の世界秩序の中で影響力の拡大を目指している。(オックスフォード・アナリティカ)