中国 都市と農村の所得格差、改革開放後で最大 発展と安定脅かす「恒常的貧困」
2010-03-05
中国の英字紙チャイナ・デーリーは2日、都市部と農村部の所得格差が改革開放政策を開始した1978年以降で最大になったと報じた。中国では78年以降、1人当たりの実質所得成長率は8%を優に上回り、絶対的貧困人口は顕著に減少した。しかし、国内総生産(GDP)の成長は不均等であり、恩恵に浴したのは東部の臨海地域、その中でも特に都市部に偏っている。近年、都市部と農村部の不平等が目立つようになり、臨海地域と内陸部の格差は拡大している。
≪分析≫
臨海地域に位置する中国河北省石家荘市に新規開店したイタリア高級ブランド「グッチ」の直営店。ここで売られるヘビ革のハンドバッグの価格(約39万円)は、同市の平均年間所得の2倍以上にも相当する=2009年9月29日(ブルームバーグ)
78年以降の貧困撲滅対策は素晴らしい成果を上げ、80年代半ばまでに都市部と農村部の1人当たりの所得格差は2倍未満に縮小した。しかし、85年以降、都市部の1人当たりの名目可処分所得は平均して約14.0%伸びたのに対して、農村部は11.3%しか伸びなかった。
金額で比べると都市部と農村部の所得格差は、2000年の4027元(約5万2000円)から09年には1万2022元に拡大した。チャイナ・デーリーが報じた中国国家統計局のデータによると、09年の都市部と農村部の所得格差は3.33対1で、改革開放政策開始後で最大となった。
市場志向の改革開放政策で最も恩恵を受けたのは、臨海地域の都市住民だ。1人当たりの可処分所得が全国平均を上回ったのは、例外なく臨海地域の都市だった。一方、内陸部で全国平均以上の省は一つもなかった。
省の間の所得格差は、それぞれの都市部よりも農村部のほうが大きい。08年の統計でみると、最も豊かな上海市と最も貧しい甘粛省の都市所得の格差は2.4対1だったのに対して、同じ上海市と甘粛省の農村部で比べると4.2対1だった。現在も、農業が農村部の雇用の約60%を占めているが、農業以外の雇用機会を見つけた人は農業に従事する人より大きな収入を得ることができる。
所得分配の格差を測る指標に「ジニ係数」がある。ジニ係数は0と1の間の数値で示され、社会構成員の所得が全員等しい完全平等だと0、社会のすべての所得を1人が独占する完全不平等だと1になる。
中国のジニ係数は、80年代前半に0.3だったが、06年には0.46になった。この数値は、ブラジルやチリなどの南米諸国や南アフリカより小さいが、米国よりも大きい。ジニ係数が0.42の閾値(いきち)を超えて所得分配の格差が拡大すると、経済発展を脅かすといわれる。
国家統計局による農村部の絶対的貧困の基準は1人当たりの年間所得が1196元以下と定義されるが、08年は農村人口の約5.6%に相当する4007万人だった。都市部の貧困を測る公的基準はないが、07年以降の失業率上昇を勘案しても、都市部の貧困事例は農村部と比べてはるかに少ないとの見解が多くみられる。だが、都市人口に農村部からの出稼ぎ労働者を含めると、中国に「都市下層階級」が出現している点が浮き彫りになる。
◇
≪結論≫
78年以降、中国で絶対的貧困人口は劇的に減少した。しかし、改革開放政策の帰結として、都市部と農村部、臨海地域と内陸地域の間で経済的・社会的格差が拡大している。所得増大と消費水準向上という改革開放政策の成果は、農民と出稼ぎ労働者の恒常的な貧困によって損なわれている。中国政府が格差問題の対処に失敗すれば、同国の将来の経済発展と社会的安定が脅かされるだろう。(オックスフォード・アナリティカ)