チリ 11日にピニェラ新政権発足 震災復興需要で経済成長加速

南米チリで2月27日未明、マグニチュード(M)8.8の大地震があり、約800人の死亡が確認された。チリでは1990年の民政移管後、初の中道右派政権が11日に発足する。ピニェラ次期大統領は、国家非常事態庁のフェルナンデス長官と、大きな被害を受けた6つの州の知事の留任を約束した。震災からの復興は、短期的には新政権の負担になるものの、中期的には復興需要により、チリ経済に失業率低下と経済成長という利益をもたらすだろう。

≪分析≫

 米地質調査所(USGS)によると、M8.8は1900年以降、世界で5番目に大きな地震で、チリにとっては、観測史上最大規模のM9.5を記録した60年のチリ地震に次ぐ、2番目に大きな地震だった。

 ◆燃料供給の途絶懸念

 2日までに確認された死者795人は、今後増えるとしても、約30万人もの命を奪ったといわれる今年1月の中米ハイチ大地震(M7.0)に比べれば、被害が小さかった。チリでは死者は地震そのものより津波によるものの方が多かったようだ。

 歴史的な地震国チリでは建築物の耐震基準が厳しい。約150万軒の家が損壊したといわれるが、倒壊した大半は古い日干しれんがの建物だった。

 最も損害が大きかったのは道路だ。多くの高架交差路や橋が崩壊した。南北に細長い国土を持つチリは、パンアメリカン・ハイウエーという1本の幹線道路に大きく依存している。特に首都サンティアゴと中部テムコ間の損害が大きい。小さな車は通行できるものの、大型トラックが通行できるよう完全復旧するには時間がかかるだろう。当面、自動車、工場、火力発電所向けの燃料供給の途絶が懸念されている。

 木材輸出用の南部の港湾が損害を受けた可能性がある。中部の港湾への被害は果物の輸出に影響を及ぼすかもしれない。しかし、チリ最大の輸出品目である銅の主要積み出し港は同国北部にあり、被害が小さかった。

 被害総額はこれから査定されることになるが、米国のリスク管理会社によると、チリの国内総生産(GDP)の20%に相当する300億ドル(約2兆6600億円)に達する恐れがある。

 震災復興は、おそらく今年後半から経済成長を加速させるだろう。任期4年の平均成長率6%、730万人の新規雇用創出を公約に掲げて当選したピニェラ次期大統領にとっては、不幸中の幸いだ。

 2010年予算は昨年11月、現在の中道左派政権によって作られた。09年予算が17.8%の伸びだったのに対し、10年の予算の伸び率は4.3%に抑えられた。ピニェラ次期大統領は、国家非常事態の際に認められる、総予算の2%に当たる約10億ドルの追加予算を承認することをすでに示唆している。

 ◆民間投資を活用

 優遇税制による民間投資拡大は、ピニェラ次期大統領の経済成長政策の鍵だ。次期大統領は2月28日、「チリ浮揚計画」の概要を発表し、この計画に民間部門を組み込むことを表明した。特に、刑務所や公立病院の再建は、民間投資を公共部門に呼び込む好機となるだろう。

 ≪結論≫

 中道右派のピニェラ次期大統領は、2018年までにチリを先進国入りさせる目標を掲げている。確かに、政権交代直前のチリを見舞った大地震は、短期的に生産力の低下という点で大きな損失をもたらすだろう。しかし、チリの新政権が直接的な災害救助に求められる専門的能力を維持できるなら、中期的には、震災復興需要により、経済成長が加速し、新政権に恩恵がもたらされるだろう。(オックスフォード・アナリティカ)

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