トルコ「政権転覆計画」で軍人ら70人一時拘束 政府、軍との衝突回避を模索

トルコで、イスラム系の公正発展党(AKP)政権に対する転覆計画に関与したとして、空軍と陸軍の元司令官ら退役将軍3人を含む軍関係者約70人が一時拘束され、うち31人が正式に訴追された。ギュル大統領、エルドアン首相、バシュブー軍参謀総長は2月25日、「法にのっとり対処する」との声明を発表。同日、将軍3人は釈放され、裁判所は3人を起訴しないとの判断を下した。軍への捜査は続けられるが、AKP政権は軍との衝突は避けようとするだろう。

≪分析≫

 親AKPで反軍キャンペーン報道を続けている日刊紙「タラフ」が1月、「バリヨズ(大槌(おおつち))」と名付けられた軍事クーデター計画をスクープした。博物館やモスク(イスラム教礼拝所)を爆破したり、ギリシャ軍を挑発してトルコ軍機を撃墜させることで、社会不安を醸成し、軍が超法規的措置で権力を掌握しようとしたとされる。軍はトルコの国是である世俗主義の守護者を自任しており、クーデターはトルコ初のイスラム系政党単独政権であるエルドアンAKP政権誕生直後の2003年に企てられたといわれる。

 軍は1960年から97年までに4度、クーデターや政治介入で政権を崩壊させている。しかし、バシュブー軍参謀総長は「クーデターは過去の遺物」と発言し、クーデター計画の存在を否定している。スクープされた文書は、さまざまな想定に基づく作戦シミュレーションの一部だという。

 07年には政権転覆を狙う地下組織「エルゲネコン」の存在が発覚した。軍関係者や世俗派知識人が200人以上も逮捕され、現在も裁判が続いている。エルゲネコン事件の捜査で、閣僚や裁判官、軍司令官に対する、合法・非合法の盗聴やコンピューターへのハッキングが行われ、不穏な雰囲気が生まれていた。

 政権転覆計画がかなり多く企てられていたことは、ほとんど疑いの余地がないが、陰謀は決まって当時の軍参謀総長によって阻止された。しかし、陰謀が次々に露見することをみると、政府に共感する情報提供者が軍内部にいるのだろう。イスラム教保守派は、これまで世俗主義の牙城だった司法と軍に足場を確保できたといえる。

 ヤルチュンカヤ検事総長は08年、与党AKPが憲法の政教分離原則を犯しているとして、同党の解党と党首であるエルドアン首相の政治活動停止を求めて憲法裁判所に提訴したが、退けられた。AKPは法曹界の支持者を動員して、同党の活動禁止を求める2度目の訴訟を正当化する証拠収集を阻止しようとしている可能性がある。宗教保守派と世俗民族主義者は双方とも、軍と法曹界を有利に利用しようとしのぎを削っている。

 バシュブー軍参謀総長はこれまでのところ、AKPが軍の権威を傷つけようとしているとみる軍将校団の怒りを封じ込めることに成功している。しかし、同参謀総長は最近、「軍に対する絶え間ない批判は軍の士気を下げる」と警告を発している。

 AKP政権の下で、軍への捜査は際限なく続くだろう。エルゲネコン裁判と同様に、バリヨズ裁判も判決が出るまで何年も要するとみられる。判決は上訴裁判所に持ち込まれ、判決が確定するまでに、さらに時間がかかるだろう。

 ≪結論≫

 エルドアン首相もバシュブー軍参謀総長も、正面衝突を避けたいと強く望んでいる。しかし、同参謀総長は8月に退任する予定だ。後任の参謀総長は現参謀総長より融和的でないかもしれない。和平の仲介など、トルコが中東外交で善意に基づく影響力を行使し始めたこの時期に、国内政治の安定性に疑問が生じている。(オックスフォード・アナリティカ)

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